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仕事を終えて、コーヒーマグ(中身はシナモン・ミルクティ)と、紙ヤスリ水(地金を紙ヤスリで磨くとき、紙ヤスリを濡らしながら作業する。水は紙やスリの粒子が混じっている)を片づけたとき、間違って紙ヤスリ水を飲んでしまった。最低。
環七沿いにあるドンキで、中央軒本店(倒産したらしい)のエビセンを買った。’こわれ美味’というネーミングが、いたく気に入った。
わたしが、もし、DJや、ストリッパー(もしの話だからね)だったら、芸名にしたいぐらいだ。’こわれ美味’またの名をHideous−Kinky−Tastie’なんて。
’ホワイトロリータ’には、想像だが、男のいやらし根性が見え隠れするが、’こわれ美味’は、直裁的で音の響き可愛い。わたしがそれを芸名にしたとたん、”わたしは壊れているけれどおいしいよ”といった、いやらしい意味を含むことになる。
十号通りのT薬局で働くナミちゃんに聞いた話。
T薬局によく、ちょっとしたもの―化粧水だとかバンドエイドなど―を買いにくる、年の頃三十五、六歳の女性がいる。彼女は、ナミちゃん曰く、清楚な美人で、長い髪を後ろで一本に結わえ、ヘアーバンドをしている。ちょっとした買い物の割には、メーキャップ・アーティストがデモストレーションするときばりに、塗り込めている。ファッション雑誌’ドマーニ’とか’ミス家庭画報’の、’オフの日’の出立ちをしている。ベージュソフトスウエードのクロプドパンツに黒の棉100%のカーディガン、インナーも黒のキャミソール、アガットの大ぶりシルバートップに皮ヒモのペンダント。素足に踵の低い黒いサンダル。ペディキュアはオレンジ色。黒いエナメルのトートバッグ。
なかなかお洒落だ。
その人は、ナミちゃんをつかまえて、こんな話をし出す。
”わたくし、結婚していたことがございましす。主人だった人は、赤坂見附にございます広告代理店で制作の仕事をしておりまして、帰宅時間がとっても不規則だったんですの。ある夜、主人が夜中の十二時頃に帰ってまいりまして、わたくし食事の支度を始めました。料理が出来上がったのが、朝の三時頃で、わたくしがお食事ができましたと呼びに行きましたら、主人は、すっかり待ちくたびれてしまって、ソファで寝入っていましたの。”
別の日の話し。
件の彼女から、ナミちゃんに電話があり、”あなたが半身浴が身体によいと薦めてくださったので、わたくしさっそく試してみました。すると、いっかな汗などでてこないで、わたくしすっかり風邪を引いてしまいました”という。
ナミちゃんが詳細をただすと、彼女は、浴槽に10センチほどお湯をため、30分も入っていたという。それでは、足湯ではないか。それに足湯なら服は着たままだ。
また別の日の話し。
彼女は、身体を石鹸で洗ったり、タオルなどで皮膚に刺激を与えるのは、皮膚によくないことだと信じていて、普段は、シャワーで洗い流すだけですまし、10日に一回程度、身体を念入りに洗うらしい。身体を丁寧に洗うと、普段シャワーで済ませる分、アカがたくさんでて、足の指まで洗い終わる頃には、ゆうに三時間はたっているらしい。
ある時など、こんな話。
会社勤めをしていたという。美人で、慶応大学卒業、身なりもいいので、採用はされる。入社してからの話。”わたくし、目が醒めてからお昼ぐらいまでは、頭がぼんやりしていて仕事が始められるのは、お昼過ぎからですの”といった調子。当然、会社は、くびになる。
ある日、彼女が小型犬―キムラクン犬、マルチーズ、テリヤなど―を六匹散歩させているのを見た。このころには、わたしは件の彼女の存在がわかっていた。
犬たちは、キャンキャンほえながら、それぞれにグルグル動きまわるので、紐が絡み合って、様々な色の毛が一つの団子状態になっていた。彼女は途方に暮れて立ちつくしていた。
―続く―
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